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<ナレッジ>Vol.3 所得拡大促進税制について

2018/06/04

1. はじめに
平成30年度税制改正大綱により、平成29年度までの時限立法とされていた所得拡大促進税制の適用対象期間が平成30年度から平成32年度までの3年間延長されました。また、控除税額及び適用要件についても大幅な変更が行われます。要件を満たすか否かで税負担が大きく変わる制度であり、今回の税制改正による適用要件等の変更点について正しい理解をすることが重要であると考えます。そこで、今回は所得拡大促進税制につき大企業向けの措置を中心に概要及び注意点を説明していきます。
 
2. 概要
大企業向けの所得拡大促進税制の適用要件は以下のようになります。
 ①平均給与等支給額が前年度比3%以上増加(従来は2%以上増加)
 ②国内設備投資額(※1)が当期減価償却費総額の90%以上
  ※1 当期に取得等した国内における減価償却資産で当期末に有するものの取得価額の合計額
 
 ①の平均給与等支給額の計算の基礎となる継続雇用者の範囲についても見直しがあり、当期及び前期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者で一定のものとされました。したがって、従来は継続雇用者と判断されていた、前期途中入社した者や当期途中退社した者等は継続雇用者から除かれることになります。以上の適用要件を満たした場合の控除税額は以下の通りです。
・給与等支給総額の対前年度増加額×15%
・当期教育訓練費(※2)が前期・前々期の教育訓練費の平均の120%以上の場合、控除率5%上乗せ→合計20%
・法人税額の20%を限度(従来は10%)
※2 国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための費用で一定のもの
 
また適用要件を満たす場合、事業税付加価値割の課税標準から給与等支給増加額が控除されます。
 
3. 注意点
まず上記の大企業向けの措置の適用がある法人の範囲について、従来は資本金が1億円超の法人又は大規模法人に支配されている法人とされていましたが、これに加えて前3事業年度の平均所得が年15億円超の法人も大企業向けの措置の適用があることとされました(※3)。
また、従来は所得拡大促進税制の適用があった設立事業年度について、同制度の適用対象外とすることとされました。
さらに、現行制度では、所得拡大促進税制の適用を受けない場合には平均給与等支給額等の算出は不要でありました。しかし、平成30年度税制改正において、以下を満たす大企業には、生産性の向上に資する租税特別措置(※4)(以下、「生産性租特」という)を適用しないこととする制度が新設されました。
①所得金額が前事業年度の所得金額を上回る
②平均給与等支給額が前事業年度以下
③国内設備投資額が当期減価償却費総額の10%以下
これにより、所得拡大促進税制を適用しない場合でも生産性租特の適用判定のために平均給与等支給額等の算出が必要となることも想定されます。
※3 平成31年4月1日以後開始事業年度について適用
※4 研究開発税制・地域未来投資促進税制・情報連携投資等促進税制(新設)の3つ
 
4. さいごに
今回の改正により、所得拡大促進税制の控除割合は引き上げられていますが、適用要件についてはハードルが上がっているものと考えられます。現在、大企業における賃上げ率の平均は2%程度(※5)というデータもあり、現状の賃上げ率では適用ができなくなる企業が多いものと考えられます。このため、本制度の適用対象期間である3年間全てにおいて適用を狙うのではなく、1ないしは2事業年度のみの適用を狙うというような戦略も必要となってくることが考えられます。この場合には、賃上げと設備投資の双方を同じ年度に行うというような工夫も必要になると考えられます。
※5(一社)日本経済団体連合会「2017年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(加重平均)」(2017年7月12日)
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/052.pdf
 
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